2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

多島海にて

セブの語学学校。語学学校といっても、曜日によっては午前中だけの授業の日もある。残る午後の時間は「自主学習」か「自由時間」となるわけだけど、その日はオリエンテーションでいっしょになった女の子と学校から徒歩1分のスーパーに行くことにした。 その…

読書日記

○月○日 なぜかふと思い立って、台湾の若者のInstagramを大量に見始める。どういうことを感じているのか知りたいな~、という好奇心。今日見ただけでも数人の子が女性作家・張愛玲の言葉を名言の引用のように風景写真の上に重ねていて、興味をおぼえる。よく…

多和田葉子の『アルファベットの傷口(文字移植)』という作品は、翻訳家が主人公でかつ言語遊戯というテーマを全面に押し出した、知的な企みにみちあふれたユニークな小説である。 原稿用紙に穿たれた「O(オー)」が果てのないトンネルのような深淵になってい…

エルンスト・ユンガー『大理石の断崖の上で』(岩波書店)

フランス文学の孤峰ジュリアン・グラックに少なくない影響を与え、マンディアルグも熱愛を公言するドイツ文学の一冊(※1)。天沢退二郎も本書にはかなりこだわっている形跡がみられる。読めば読むほど不吉な精霊に身体が囲繞されていく稀有な読書体験。 雲香庵…

安永知澄『ステップ・バイ・ステップ』(エンターブレイン、上下巻)

何らかのかたちで「階段が登場する」という一点だけを共通点にして紡がれてゆく連作短編集。 ためらいなく大傑作だと呼びたい、さけびたい。凡百のSF小説家を青褪めさせるような、真に圧倒的なイマジネーションの横溢。たしかな文明批評眼に裏打ちされた、異…