SF

ケイト・ウィルヘルム『杜松の時』(サンリオSF文庫)

サイト「翻訳作品集成」のウィルヘルムの項には一言、「『杜松の時』の衝撃感は忘れられない」。筆者にとっても、これからの人生で幾度となく反芻してゆくだろう唯一無二の作品だった。その文明批評眼のありようにおいて、絶頂期のバラードや伊藤計劃『ハー…

ジェフ・ライマン「オムニセクシュアル」(「SFマガジン」1991年11月号)

巽孝之が「セクシュアリティを脱構築するSF短篇としては三本の指に入る」という評価をしていて手に取ったのだが*、その期待をさらに上回る病気作だった。エレン・ダトロウ編のジェンダーSFアンソロジー、Alien Sexのために書き下ろされたものなのだが、書き…

ブルース・スターリング『蝉の女王』(ハヤカワ文庫SF)

蠱惑的なアイデアが蠱惑的に詰まった蠱惑的な小さい本。interdisciplinaryなインスピレーション体(たい)がハチの巣のように充満していて、とすると「評価するための作品」というよりは、未来を発明し直す権利のある者たち――作家や科学者や建築家らが自己のイ…

ジェフ・ライマン「征たれざる国」(中村融・山岸真編『20世紀SF 1980年代 冬のマーケット』河出文庫)

かつて「SFオンライン」というウェブマガジンがあった。SFマガジンとはまたすこし異なった編集方針で好きだったのだが、その中でも特にくり返し見ていたコンテンツが「20世紀SF全作品考課表」(特集「『20世紀SF』を読もう」内)。ずばりあの河出文庫の超巨大…