ダンテ・ガブリエル・ロセッティ「召された乙女」(荒俣宏・編訳『英国ロマン派幻想集』国書刊行会)

作者はラファエル前派の画家としても知られるが、これはかなり物語要素のつよい詩。昇天したばかりの乙女は、地上に残してきた恋人のことを忘れられず、焦がれる思いを断ちきることができない。黄金(きん)に輝く天国の垣にもたれかかり、下界を見下ろす彼女。白い寛衣をまとい、愁いをたたえた瞳は深い海の青色に染めぬかれている。……天国という神秘の領域を、このようにも空間として描きうるのかと驚いた。きわめて壮麗なヴィジョンの作品である。解説中、荒俣センセイが「傑作」「絶唱」としつこいほど連呼しているのが、なんだかうれしい。