読書日記

2017年 ○月×日

 カナダの古本屋から、マイクル・ビショップの短編集「Blooded on Arachne」が届く。海を越えて送られてくるものなのでひと月くらいはのんびり待つつもりだったのだけど、Paypalで支払いを終えた数日後にすぐやって来たのでびっくりした。

質の良い紙を使っているとはお世辞にも言えず、表紙も異星人のチープなイラストレーション。でも、ここにはSF・ファンタジィの広大な世界の中で僕が最も好きな小説のひとつである「宇宙飛行士とジプシー」が収められていて、それを今から英語で読み返すことのできる(しかも偉大な浅倉久志の翻訳とつき合わせながら)興奮にすでに体は震えっぱなし。そして、表紙をめくってみれば献辞は(Dear...)自分が卒論の研究対象とした作家に捧げられていて、静かにうれしくなった。

(なお、2010年8月号にSFマガジン浅倉久志追悼特集が組まれた際、大森望はエッセイでこの作品について触れている。長編・短編問わず浅倉さんの訳した秀作は数え切れないほどある中で、75年のSFマガジンにいちど掲載されたきりのこの作品をあげるということは、それだけでビショップのこの短編の神がかりぶりを物語っているのではないだろうか。)