○月×日 台北 金瓜石

台北のとある私立大学の、日本語学科の子2人に台北の観光地を案内してもらうことになった。この日の午前中三人が訪れたのは金瓜石というパワースポットで、九份へと向かうバスで九份に着いても降りずに、そのままさらに長いこと乗ってついに逢着したその終着点である。(僕たちを除いたすべての観光客が九份で降りたので、本当に正しいバスか不安になって運転手さんに訪ねたほどだった!)

陰陽海という海を身近に見下ろせる、山の上の地。頂から海を見やると、水の色がある線を境に黄土色めいた不思議な色と濃い青色とでくっきりと別れているのがわかる。観光客は僕たちを除けば中国語を話す数人だけで、建物も視界には数えるほどしかない。全体の空気を王のように支配しているのは、風に吹かれてゆれる金色のススキの音である。

お昼に入った小さな食堂で二人に手渡したのは、表参道のMOMA Design Storeで買ってメッセージをしたためたグリーティング・カードと、今日マチ子のオールカラー・マンガ『センネン画報 その2』。各ストーリーは基本的にタイトルを除きセリフなしでお話が進むので、日本語を勉強している子にいいかなと思ったのだ(このマンガはタイトルと絵との響きあいがシャープな世界観をつくり出すため、辞書を引いてタイトルの意味がわかった瞬間にマンガ全体の読み方もあざやかに変わるかもしれない)。

ほかに「文字が少ない」「読み終わった後に充実感が得られる」「(なにより)自分が単純に好き!」といったものとして

・蜂飼耳+牧野千穂「うきわねこ」
谷川俊太郎「クレーの天使」

といった絵本も旅行の荷づくり中にぱっとひらめいたが、結局はなんとなく上記の本に(いきなり第2巻から渡したのも、2巻のほうが1巻より個人的に好きなので)。「恋の話っぽい」とページをめくりながら笑って言っていたけれど、気に入ってくれればいいな。