新刊で出た時には買っていなかった佐々木敦『ソフトアンドハード』(太田出版)を読む。(守備範囲の広い人なので、どんな作品が取り上げられているか気になって)パラパラめくる程度のつもりで読み出したんだけど、三段組の時評のパートがかなり面白くて初めから終わりまで熟読してしまった。

岩波書店のシリーズ『世界文学のフロンティア』へのレビューには思わずふせんを貼ってしまう。

---

すごく楽しみにしていたシリーズが遂に刊行開始。ゴンブロヴィッチ、ジェイン・ボウルズが入った『愛のかたち』、カントルやパウンド収録の『ノスタルジア』とまず二冊。「世界文学」ってワールドミュージックと同様でイデオロギッシュに機能してしまう危険性があると思うのだが、それを逆手に取ったかのような、各テーマの設定とメンツのそろえ方に覗く編者達の戦略と愛情に打たれました。
(強調引用者)

---

「世界文学」ってワールドミュージックと同様でイデオロギッシュに機能してしまう危険性がある」という指摘は示唆深いなと思う次第。多ジャンルのレビューを手がける人ならではの発想だと思うし、たとえば都甲幸治や沼野充義池澤夏樹を読む時にこういう視点があってもいいと思う。普遍の顔をしているものの中に、気づきにくいバイアスが横たわっていることもありうるわけで。