読書日記

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なぜかふと思い立って、台湾の若者のInstagramを大量に見始める。どういうことを感じているのか知りたいな~、という好奇心。今日見ただけでも数人の子が女性作家・張愛玲の言葉を名言の引用のように風景写真の上に重ねていて、興味をおぼえる。よく名前を聞くけど読んだことのない作家のひとりなのだ。調べてみると張愛玲は恋愛小説の書き手として知られているらしく、恋愛に関して遺した言葉のみをアンソロジーのように集成した「張愛玲語録」のような本も出版されているもよう。僕なんかはたとえば『鈴木いづみ語録』なんて本をひとり自分の部屋にいるときにめくるのが好きなのだけど、これもinsightfulな女性作家の語録なのだとしたらぜひ読んでみたい。

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いつかの話の続き。張愛玲についてその後いろいろ調べたり実際に作品を読んだりし、少し驚いたこと。台湾の若者に圧倒的に支持されているのを見たためか無意識に台湾の作家なのかと思っていたら、中国の作家だった。にもかかわらず、『講座 台湾文学』(国書刊行会)など台湾文学の研究書で大きく取り上げられている。理由は、第二次大戦後の大混乱のさなか中国から香港に脱出し(さらにその数年後にアメリカに亡命)、本国よりもはるかに先に台湾と香港で熱狂的に迎えられ、かつは文学的にも評価されたからだという。映画化もされた「中国が愛を知ったころ」他を読んだのだけど、現代の日本の恋愛小説とは大きく味わいが異なると感じた。政治体制や社会のあまりにも激しい変化や、中華圏の村上春樹の読まれ方など、いろんなことに思いをめぐらさずにはいられなくなってくる。(2020)