山尾悠子が「幻想文学」60号のアンケート、「幻想ベストブック1993-2000」で挙げている本の一冊は中野美代子(中国文学研究者)の『眠る石』。円城塔もある書店の選書フェアで別の本を「圧倒的」と述べていたし、「小説家とはあまり認識されていないけれど、writer’s writer的な、静かに敬意を集める幻想小説作家」ともみなせるのだろうか。文庫にもなっている『眠る石』は東南アジアもので、一篇一篇がそれこそもの足りないくらいに短いんだけど、寺院や回廊や石柱の質感や死の匂いを感じさせる好著です。

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夜想山尾悠子特集「山尾悠子年譜」、少なくともひとつ抜けがある気がする。安田均水鏡子らが携わった「オービット」1977年秋号(イギリスSF特集)に数ページばかりのインタビューが掲載されているのだけど、書誌として記されていない。「同人誌は省く」というスタンスであれば、「星群」掲載のエッセイだって省かれるはずだから、これは抜けと考えていいのではないでしょうか……。なお、「幻想文学」3号のインタビュー「世界は言葉でできている」は83年なので、非商業誌としてもこれは最初期のインタビューとみなせるのでは。