ワート・ラウィー「詩とは反逆だ」

現代タイ文学翻訳家、福冨渉の2022年のnote記事より。1971年生まれのタイ作家の散文詩とのことだが、くるおしいまでの自由への希求を結晶化させた秀作。以下、冒頭近くの数連のみ引用。

詩とは数学だと言うひとがいる 数学とは論理の詩 愛とは責務の詩 詩とは手足の舞 静謐な絵画だと 信仰心だと 香り 香り 香る花なんだと 舌を潤し喉に染み入るワインだと うたなんだと 子どもの名づけなんだと 軽やかに浮かぶ綿だと 命の建築の骨組みだと

だけどぼくは言う それが反逆だ

詩とは扉を開けることだと言うひとがいる 思考と感情の制約から ひとを解き放つことなんだと 秘密の開示だと 人間の感情とつながるなにかしらなんだと
詩とは心から燃え上がる真理だと言うひとがいる つねに真実を語る嘘なんだと ほんとうの友愛なんだと
詩とは響き渡る音だと言うひとがいる 踊りに誘う影の会釈だと 感情と人格からの逃走なんだと
詩とは設計なんだと言うひとがいる
詩とは権力の正反対にある行為のすべてだと
詩とは地球の極の地平線のはるか上 重なって奇妙に見える たくさんの色の帯だと

だけどぼくは言う 詩とは反逆だ