ジェフ・アンダミア編のアンソロジーより、Musharraf Ali Farooqi “The Jinn Darazgosh”。恥ずかしながら、(幻想小説に限らず)パキスタンの小説というものそのものを読むのが生まれて初めて。秀作とは感じなかったけど、ざくろの木が作品のなかで大きな役割を果たすとか、「因果応報」ということばが似合うようなストーリー展開にある種の新鮮さを覚えたのは否定できない。そして読みながら、パキスタンの小説ってある種の宗教性と関係しているものが多いのかな?という素朴な好奇心から湧いて出た疑問も生まれた。

でもすぐに気づくのはそもそもこの小説の副題にはfableという語がきちんと含まれているということで、この小説をもってパキスタンの文化や民族性について理解しようとするのは、たとえば日本の外の読者が芥川龍之介の説話的作品を読んだだけで日本の現代文化についてなにか判断するのと同じくらい安易なことなはずだ。その国について知りたい、という感情そのものはまったく健全なことだと思うけど、ステレオタイプな像を持つことのあやうさについては少しは自覚的でありたい。