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とあるパン屋さんで賞味したハチャプリ。食感はもちもちというよりハチャハチャでプリプリ。すでに多くの新聞に記事が出たように、2020年はジョージア料理に火がついた一年だった。北は北海道から南は沖縄まで全国に店舗を持つ松屋は、冬のあいだシュクメルリをメニューとして提供したけれど、コーカサス地方の料理に手軽にアクセスできるなんてすごいことだと思う。

たとえば多和田葉子の『エクソフォニー』(岩波現代文庫)にも「日本には意匠として外来語や海外の文物はおびただしいほどに流入しているが、国際感覚については未だしだ」的な主張が述べられている(大ざっぱにすぎるかもしれない要約)。けれど、日常をこんなにも多様な花々で彩ることができるって素晴らしいと個人的には感じる。「Aであるが、B」のAとBは「Bであるが、A」というふうに置換可能であって、折にふれそのAの部分に積極的に意味を見つけてゆきたい。

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ジョージアの文化に興味が生まれたので、早速ジョージアの先生とスカイプ英会話。

話題その1:魅惑の上陸、アジャルリハチャプリ

日本でハチャプリとして親しまれているものは、多くがアジャルリハチャプリという、あくまでハチャプリの一種に過ぎないことがわかった。同じお好み焼きでも広島と大阪では異なるように(このたとえはgoogleした日本語のウェブページから拝借)、アジャルリという沿岸部スタイルのハチャプリだから、形もボートのような形をしているそうな。言われてみると、都内のRodで買ったハチャプリもレシートの商品名は「チーズボート」と記載されていた。

話題その2:ジョージアざくろざくろの色

georgiastartshere.com

何回かレッスンを行う中で、ジョージア料理を紹介したウェブ上の英語の記事を教えてもらった。そのなかでも、ざくろを使ったカラフルな料理(ბადრიჯანი ნიგვზით)が目をひき、思わずこんな言葉を口走ってしまった。

ざくろってそっちの地域だとたくさん生えてるの? これはまったくジョージアじゃないんだけど(地理的にジョージアに近い)アルメニアの映画でざくろの名を冠したものがあって……」

普通に考えれば「?」となる発言だろうが、その先生ははたして、いつまでも斬新で鮮烈なパラジャーノフのあの映画「ざくろの色」のファンなのだった。

あとで調べてみると確かにそうだったのだが、「ざくろの色」の主演女優はジョージア(グルジア)の出身。植物の話で言えば、ざくろは「こっち」だとどこでも見ることができ、映画「ざくろの色」は本当に好きでフライヤーの画像を一時期SNSのプロフィールの背景にも用いていたとのこと。旧ソ連国家(post-Soviet nations)の歴史的な背景や、グルジアの文字やあいさつも教えてもらえた。

アルメニアにはパラジャーノフ博物館なるものまであるそうな。いつか行ってみたいような、いや、気まぐれな妄想の中でもてあそぶだけでも十分愉しい気はする。)