2021-01-01から1年間の記事一覧

日本マンガの英訳を数多く世に送り出している英語圏の翻訳家とメッセージでいろいろおしゃべり。自分の大好きな内田善美のマンガに興味を持ってくれたので、『草迷宮・草空間』を津野裕子『雨宮雪氷』とあわせ航空便で送ることに。気に入ってくれるといいな…

小説の夢

高貝弘也の文体で書かれたポール・ディ・フィリポ「系統発生」。 〇 川端康成「片腕」の文体で書かれたディーノ・ブッツァーティ「落ちる娘」。 〇 長編版・カリン・ティドベック「ジャガンナート」。中編版・山尾悠子「遠近法」。長編版・筒井康隆「家」。…

La letteratura fantascientifica giapponese. Storia, temi e diffusione. イタリアのAntonino Caminitiという方による日本SFの研究論文(本文イタリア語、要旨のみ日本語)。このうち「第三章は日本SF文学の翻訳と海外流通を調査することを目的としている」…

キアラン・カーソン『琥珀捕り』(東京創元社)

現代人は祖父に飢えている。動画投稿サイトやiTunesにひとたびアクセスすれば星の数以上のコンテンツが押し寄せてくる一方で、「太陽のもと、変わらぬものは何もなし」な社会のはげしい変化を背景に、実の祖父による長話や武勇伝に耳を傾ける機会は意外なま…

本に呼ばれたような気がして、鈴木いづみ『いづみ語録』や<鈴木いづみコレクション>(ともに文遊社)の眉村卓との対談を読み返す。 松田青子『持続可能な魂の利用』(中央公論新社、2020年)において、「少女」という語に「美」がついて流通している現在の地球を…

○月○日 とあるパン屋さんで賞味したハチャプリ。食感はもちもちというよりハチャハチャでプリプリ。すでに多くの新聞に記事が出たように、2020年はジョージア料理に火がついた一年だった。北は北海道から南は沖縄まで全国に店舗を持つ松屋は、冬のあいだシュ…

www.nytimes.com New York Timesに掲載された、Jeff VanderMeerの最新インタビュー。"Which writers — novelists, playwrights, critics, journalists, poets — working today do you admire most? "という質問への答えの筆頭に、ナイジェリアの女性SF作家Pe…

内田善美「かすみ草にゆれる汽車」(集英社)

内田さんの著作(『ソムニウム夜間飛行記』などの画集含む)で一冊だけ読み残していたもの。 この短編集に収められている作品はどれも、アメリカ中西部イリノイ州にある「風の町」ゲイルズバーグを舞台としている。そのため、作者が表紙絵を手がけているハヤカ…

短篇小説日和

・ノヴァーリス「ヒアシンスとバラの花」(「森」3号) 森開社は主にフランス文学を瀟洒な装丁で刊行するプライベート・プレスだが、「森」の少年特集号(1976年)では矢川澄子訳のノヴァーリスというめずらしい一作が掲載されている。ただし本作は「ザイス…

SFマガジン700号オールタイムベスト回答

結局のところオールタイムベスト投票の魅力とは(伊藤典夫もどこかで書いているように)マニアの第七段階に到達してしまったすれっからしのおたくと、SFを読み始めてまだ日が浅いネオファンとが誌面でぶつかり合うその力学の中にある。SFマガジン600号の各識…

詩に近づく小説、小説に近づく詩

食虫植物を指にささへて、長い硝子管で月を吸ってゐると、やがて脳髄が青白くなり、真珠色になり、巻尺で計ると背中の方から破れてしまつた。――北園克衛 さて、「詩に近づく小説、小説に近づく詩」というテーマで小さなブックリストを作ることになった。 自…

brainvsbook.wordpress.com よしながふみ、中村明日美子、近藤聡乃、円城塔などを訳しているカナダ人・日英翻訳家、Jocelyne Allenの読書感想ブログ(翻訳リストはコチラ)。2010年代に刊行された女性作家によるマンガへのレビューが多数。

「残雪研究」8号

残雪に関心がある人は、この号だけは持っていて損はしないと思う。理由は、「近藤直子著訳一覧」が掲載されているから(おそらくまだ在庫ありのはず)。 まず、これは「近藤直子の目録」であって、包括的な残雪の移入書誌ではない(たとえばすぐに気づいたもの…

最近買って「どうしても紹介したい!」と思った洋書のひとつがAnatomy of Wonder。1976年に初めて刊行されたSF研究書で、英米だけでなくデンマーク、スウェーデン、ルーマニアからイスラエルまで非英語圏のSFについて国ごとの概論と主要な作品の解説を多数掲…