SFマガジン700号オールタイムベスト回答

結局のところオールタイムベスト投票の魅力とは(伊藤典夫もどこかで書いているように)マニアの第七段階に到達してしまったすれっからしのおたくと、SFを読み始めてまだ日が浅いネオファンとが誌面でぶつかり合うその力学の中にある。SFマガジン600号の各識者の回答を見ていると、次のような条件をすべて満たすかたちで投票を行っている人々がたしかにいるように見受けられる。

(イ) 作品の初出年代をばらけさせる(1950年代、1960年代、2000年代…)
(ロ) 自分が読んだ時期をもばらけさせる(10代、20代、40代…)
(ハ) できるだけさまざまな作風のものを選ぶ(SFというジャンルの懐の深さ)
(ニ) 100号前(SFマガジン500号)の自分のアンケート回答とは異なる回答をする(忘却という不可避のものと個人的なクエストとの両立)


ということで、自分も今回はこれらのポイントに意識的になってみたい。快楽の渦は指から口へ、見知らぬどこかへ。もとより自分の読書史を数行で要約するなんてどだいムリな話なので、静慮はせずに目を瞑って瞬間の気分で選んでみたい。それでもせめて海外短編だけは最低ベスト40までは欄を設けてくれないと安心してお墓にも行けません。ちなみに回答者の年齢は20代、押忍(♂)。


海外長編
1.イタロ・カルヴィーノ「冬の夜ひとりの旅人が」
2.スタニスワフ・レム「完全な真空」
3.カート・ヴォネガット・ジュニアスローターハウス5
4.ブライアン・オールデイス「地球の長い午後」
5.アンナ・カヴァン「氷」

国内長編
1.筒井康隆「美藝公」
2.荒巻義雄「神聖代」
3.萩尾望都銀の三角
4.山野浩一「花と機械とゲシタルト」
5.秋山瑞人鉄コミュニケイション

海外短編
1.マイクル・ビショップ「宇宙飛行士とジプシー」
2.ジョン・クロウリー「The Next Future」(未訳)
3.ジョン・ヴァーリイ「残像」
4.J・G・バラード「近未来の神話」
5.フリッツ・ライバー「バケツ一杯の空気」

国内短編
1.山尾悠子「夢の棲む街」
2.大江健三郎「もうひとり和泉式部が生れた日」
3.中井紀夫「山の上の交響楽」
4.小川一水「漂った男」
5.小松左京「戦争はなかった」

海外作家(順位なし)
テッド・チャン
〇サミュエル・ディレイニー
シオドア・スタージョン
フレドリック・ブラウン
〇ショーン・タン

国内作家(順位なし)
筒井康隆
山野浩一
雪舟えま
三五千波
水鏡子

追記
以上のような気合の入った文章までしたためておきながら、早川書房にハガキ/メールで投票するのをすっかり忘れました。800号までさようなら……。(2014)