2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

伊藤重夫『チョコレートスフィンクス考』(跋折羅社)

2010年代に36年ぶりに新刊が出た伊藤重夫の一冊目の単行本。『踊るミシン』が86年に発行されたおよそ230ページの長編であるのに対し、こちらは70年代に描かれた作品を多く含む300ページ超えの重量級中短編集である。またすべての作品は、『踊るミシン』より…

ジェネギャの快楽 その1

「ユリイカ: 特集 現代語の世界」。あまりに面白くて、雑誌の隅から隅までを一気に読みつくしてしまった。どの論考もパッションに溢れているけど、下に取り上げないもののうちでほか特に気になったのは、綾門優季「現代口語演劇と、あまり関係のない現代口語…

一九九六年に、アメリカで日本文学を研究しているスティーブン・ミラー准教授はPartings at Dawn: An Anthology of Japanese Gay Literature(『有明の別れ――日本ゲイ文学集』)という分厚い本を出して、第一歩を踏み出した。平安期から現在まで、フィクション…

ワート・ラウィー「詩とは反逆だ」現代タイ文学翻訳家、福冨渉の2022年のnote記事より。1971年生まれのタイ作家の散文詩とのことだが、くるおしいまでの自由への希求を結晶化させた秀作。以下、冒頭近くの数連のみ引用。 詩とは数学だと言うひとがいる 数学…

プチ気づいたこと。去年刊行され話題を呼んだ台湾出身のマンガ家、高妍『緑の歌』上巻p220-233に出てくる台北のお店は外観や内装、加えて著者のインタビュー(→Link)から判断するとこれはもうMangaSickですね。 高校から同人誌を読んだり描いたりしていました…

なんとなく湧いてきた、奇想短篇小説のフェイバリット。あくまで今日の気分なので、一日経つと涼しい顔をしてすべて入れ替わったりします。ロバート・クーヴァー「ラッキー・ピエール」アウグスト・モンテロッソ「ミスター・テイラー」ヴォルテール「ミクロ…

スワヴォミール・ムロージェク「漫画」(未訳)

ムロージェクは以前読んだ『鰐の涙』(未知谷)という作品集が印象に残っている。本の結構そのものは短編小説集なんだけど、ときおり挿入される著者自筆の漫画がいい味を出していて、クスクス笑いっぱなしの読書体験にさらにひと振りのチャーミングなスパイス…