内沼晋太郎、綾女欣伸 『本の未来を探す旅 台北』(朝日出版、2018)。韓国編とあわせて、出版業界の人間に限らす、本をめぐる文化の違いや海外のブックデザインetc.に関心のある向きには強くオススメしたい。

洗練された選書で知られる大型新刊書店・誠品書店を紹介する章で驚いたのが、本の著者たちが書店のディレクター、エミリー・ヤンにインタビューするなかでの次のくだり(強調引用者)。

誠品のスタッフはどんなふうにして選書のトレーニングを積むんですか?
エミリー:誠品には店内の本はすべて持ち帰って読んでいいという福利厚生があります。一度に2冊まで、5日間借りられる。読んだあとで購入する人もいます。

自分は学生時代、図書館で借りた本を雨で濡らしてしまって、カウンターに持っていったら弁償をするよう言われたことがあった(そしてもちろんそうした)。この福利厚生サービスは、本に関する「キレイ」の感覚がちがっていないと成り立たないのでは??

さらにもうひとつ別の国の例を出すと、オーストラリアに滞在していた時、学校の図書館で借りた本をやはり濡らしてしまったことがあった。やっぱり弁償だろうなあ、とどきどきしながらカウンターに持っていって、わざわざ「ここを濡らしてしまったんですけど…」と白状した。すると受け付け係を教師の仕事兼業で務めていた先生は、1.2秒ほど本を見てから、こともなげに「このくらいならなんでもないわよ」と言ってさっさと返却処理してしまったのを覚えている。

うーん、でもむしろ、日本の衛生観念のほうが例外的なのかもしれない。まんだらけとかでは、買い取り価格6000円とかの情報をサイトに出しているマンガでも、ヤケが少しあるだけで買い取り価格が数割ダウンとか普通だもんなあ。まんだらけに足繁く通っていた頃には何度も泣かされました。

本の未来を探す旅 台北