千葉文夫『ファントマ幻想』(青土社、1998)より、「パリのキューバ人 アレッホ・カルペンチェール」。長年読みたい!と思っていた、11年に及ぶカルペンティエールのパリ時代について扱った論考(著者は自分の熱愛の作家、マルセル・シュオッブの全集の翻訳家でもある)。カルペンティエールがカフェ「ドゥマゴ」の常連だったとか父親がパブロ・カザルスに師事していたといった事実も知らなかったし、フランスの芸術家達との交友、浩瀚な音楽批評の書の話まで興味深い点は尽きない。

ちょっとおやと思ったのが、自分が大学1年のときに比較文化論の授業を取っていた先生が、同じくカルペンティエールのパリ時代についてすぐれた文章を書いていると紹介されていたこと(「現代思想臨時増刊 総特集ラテンアメリカ」に所収)。残念ながら、ゴンブロヴィッチバーセルミならともかく、18才のときにはまだカルペンティエールは読んでいなかったなあ。エネルギッシュな印象の先生で、僕の知り合いではあるけど、と前置きしたうえで、管啓次郎の本は良い、なんて教壇で熱く語っていたのを思い出す。