・BBC非英語映画ベスト100(柳下毅一郎ブログ「映画評論家緊張日記」)

2018年にBBC Cultureが非英語映画ベスト100という大規模なランキングを行った際、1位は『七人の侍』だったが、柳下氏を含む日本の評者は誰ひとり投票しなかったということがなぜか印象に残っている。

自分は映画批評のコンテクストはまるでわかっていない。また、BBCのサイトをぱっと見た限りでは、そもそも日本人の評者自体が多くはない様子。ただ自分が一瞬思い浮かべたのは、日本人はあまりいないが外国の人はひっきりなしに訪れる浅草のとあるお寺の光景で、そしてこういうドーナツ化現象のようなものは日本という国の固有性で理解されやすいがどの国や文化圏でも起こりうるものだともあらためて感じる。

・Binyavańgä Waina “How to Write About Africa”(→Link)

数年前、ジェフ・ライマンの活発な活動ぶりに惹かれて、インターネットのとあるサイト上の、承認制アフリカSFのコミュニティに参加した。自分はあくまで面白「そうだから」、優れた作家を知りたいから参加しただけで、アフリカSFというものは短篇含めてなにひとつ読んでいなかった。しかしそこでは、コミュニティに新規で加わったものは、なにかあいさつ文をしたためるというのが規則としてあったのである。当然のように僕は疚しさに包まれ、「恥ずかしながら…」と始まる謝罪めいた文を書くこと以外思いつかなかった。

驚いたのは、「(the Westから)周縁に追いやられているという点では、アジアもアフリカと同じだ」という好意的なコメントをもらったこと。そういう考え方をしたことは一度もなかったので、わからない部分が残ると同時に何か自分のなかの世界像が変わったような気がした。

「GRANTA」2005年のアフリカ特集号に掲載されたケニアの作家Binyavańgä Waina “How to Write About Africa”は文章指南術の体裁を取った、世のフィクションに瀰漫する「アフリカ表象」への切実で真摯なる批判である。ここ10年、ふと見渡すと「アジア人が自分だけ」という空間に幾度となく身を置いてきたが、理由もわからずこのエッセイに感情移入するのをとどめることはできなかった。