ジョン・アップダイク『アップダイクと私』(河出書房新社)。ちょうど先日、母校の大学図書館で同著者のDue Considerationsを見つけて少しコピーを取ってきたものの、批評・エッセイ集の全体像がまったくつかめずにいた。この本の巻末にある若島正の解説はまさに自分が求めていた情報そのものであり、こういう読み手がいることに感謝を抱かずにはいられない。

アメリカのSF作家がアップダイクのことを「退屈な主流文学」として敵視している文章を見たことがあるが、英語、日本語両方でつまみ読みしてみた感触では、書評する本の良さをていねいに引き出そうとし、非英語圏の文学、実験的な小説に敏感に反応するエッセイストだという印象を受ける。カルヴィーノを自分が重訳で読んでいたときにはWilliam Weaverによる訳文を英語母語話者がどう捉えているか参考になったこともあったし、佐々木敦によるとロベール・パンジェの英訳に序文まで付しているらしい。

ところで、普段小説などは読まないうちの父親が、ある日家でビールを飲んで酔っ払いながら「そういえばむかし、志村(正雄)先生の授業で恐竜が出てくるアップダイクのへんな短編をよまされたな」と言っていたけど、あれはジュディス・メリルの年刊SF傑作選に入っている「ジュラ紀に」のことだったのだろうか。