BTSのメンバーが入隊することが大ニュースになるような世界で、韓国の軍隊のことが知りたくて手に取った一冊。もと軍人の若者がキツい軍隊生活のことをセキララにネット上で綴った本書は、書籍化するとすぐに韓国ではベストセラーとなったと訳者あとがきにある。
四方田犬彦氏のすぐれた巻頭解説(という名の序文)がAll Reviewsのサイトに公開されているので、そちらを見れば本書の意義についてはある程度了解されると思う。著者イ・ソンチャンの文章は美文からはほど遠いが、自分を取り巻くすべての状況を相対化しときに嗤いときに冷静に観察する視点はやはりなにがしかの才覚がもたらすものだろう。軍隊の中にキリスト教の教会があって休日に希望者は礼拝できるなどというのはとても面白い。それからいまでもこうした文化が続いているのかはわからないけれど、軍の中にお菓子を売るキオスクがあって、甘いものに飢えた主人公とその仲間たちがロッテの「チョコパイ」や「自由時間」(後者は日本では見たことない!)に食らいつくシーンなんて矢鱈に印象にのこる。