鈴木賢『台湾同性婚法の誕生  アジアLGBTQ+燈台への歴程』(日本評論社、2022)。これと赤松美和子、若松大祐編『台湾を知るための72章 第2版』(明石書店)をあわせて読むだけでも、台湾における同性婚合法化へのけして平坦ではなかった道のりが視えてくる。

自分がまったく知らなかったのは、同性婚をめぐる2018年の国民投票では同性婚推進派が大きな差をつけられて敗北していたこと(たとえば、「民法婚姻を男女に限定」の項目では766万対291万で同意票が上回っていた)。また、反対派のネガティブキャンペーンのための広告費は日本円で4億円を超えていたと推察され、同性愛はエイズ、およびそれがもたらす死の原因になるという安直な物語仕立てのCMがテレビではくり返し放送された(海外のキリスト教関係の団体から資金援助があった可能性も示唆されている)。また、『台湾を知るための72章 第2版』「性的少数派」の項目では、女性初の総統・蔡英文が「開明的」な法律学者を「日本の最高裁判所判事のような憲法解釈する職能」を持つ司法院大法官に指名したことが同性婚婚姻平等に間接的に影響をあたえたとはっきり書いている。少なくともひとつ判断できるのは、2018年において台湾一般市民のマジョリティが同性婚に対して寛大だったわけではなかったということだろう。