米川良夫編訳『マリネッティをお少し』(非売品)


イタリア〈未来派〉の詩人・マリネッティの作品をその名の通り「少し」だけ編訳した一冊。〈未来派〉と言っても、たとえばタルホのようなキラキラ感を期待してはいけない。

コトバを円形に配置するとか、タイポグラフィ上の工夫があったりするけど、そのことそのものは今の時代には新奇さをもたらさないと思う。個人的には「視覚」よりもむしろ、列車が爆走してゆく時にレールが立てるかん高い軋んだ音とか、気球から放射されるバイブレーションとか、耳に飛び込んでくる要素に快さを感じた。20世紀のヨーロッパ前衛文学運動の上でも重要なひとりとされているわけだし、もっと読んでみたい。