2020-01-01から1年間の記事一覧

朱天心「古都」(国書刊行会)

初めに、川端康成の『古都』を小説の内部に大胆に取り込んでいるという紹介をどこかで見た。そのため、上巻が川端康成、下巻が朱天心によって書かれた『古都』という大きな一つの物語をイメージし、川端の読了後に手を休めずに読み始めた。 その選択は正しか…

ジェフ・ライマンによる日本SF宣伝のポスト

とあるきっかけで12月にジェフ・ライマン氏と少しだけやりとりをしたのですが、そこから派生して(?)ライマン氏が日本SFを宣伝してくれています。 以下、事のなりゆき。19年にダブリンで行われたワールドコンにおいて、星雲賞の授賞式と日本SFの紹介を兼ねた…

私たちの知らない所で日本文学の花は咲いている

・その1フィンランドのファッション誌「REVS」で高橋睦郎の特集(via ジェフリー・アングルスtwitter)。文脈が読めなさすぎて笑った。・その2ジェフリー・アングルスの協力で、アメリカ・ミシガン州のマイヤー野外彫刻館に多田智満子の詩を刻んだ石碑が建て…

○月×日 台北 金瓜石 台北のとある私立大学の、日本語学科の子2人に台北の観光地を案内してもらうことになった。この日の午前中三人が訪れたのは金瓜石というパワースポットで、九份へと向かうバスで九份に着いても降りずに、そのままさらに長いこと乗ってつ…

2010年に読んだ本のベスト(収穫)

※「2010年代に読んだ本のベスト」ではなく、「2010年という一年に読んだ本のベスト」 ジュリアン・グラック「狭い通路」 ハイナー・ミュラー「指令」 文月悠光「適切な世界の適切ならざる私」 粕谷栄市「世界の構造」 朝吹亮二「密室論」 アンドレ・ピエール…

小説のストラテジー♯

視覚的でありながら絵画では表現不可能な世界、絵画を超えた世界。 山尾悠子やシュオッブやボルヘスの小宇宙、ごく初期の荒巻義雄や(少し落ちるが)粕谷栄市のいくつかの作品。 これらは物語を展開させ推進させる動力を 必要としないし、相性が悪い。だから、…

ファッション系の展覧会にももっと足を運びたいという気持ちで、目黒の東京都庭園美術館にて「装飾は流転する」。 すべての展示を見おえたあとに待っているミュージアムショップで、なぜか2013年という昔に発行された「美術手帖」初音ミク特集が平積み。ぱら…

Shaun Tan「Cicada」(Arthur A. Levine)

なんとびっくり、傑作『アライバル』の著者、ショーン・タンが新作のモチーフに選んだのは働き者の日本の会社員。 勤勉なさまをわが国の言い方では「アリのように働く」と言うことがあるけれど、面白いことにオーストラリア出身のこの作家はそんな存在をセミ…

読書日記

2017年 ○月×日 カナダの古本屋から、マイクル・ビショップの短編集「Blooded on Arachne」が届く。海を越えて送られてくるものなのでひと月くらいはのんびり待つつもりだったのだけど、Paypalで支払いを終えた数日後にすぐやって来たのでびっくりした。 質の…