Comic

白山宣之『10月のプラネタリウム』(双葉社)

たった今ラストのページを読みおえ、頬を火照らせ、呼吸を整えながらこの文章をタイプしている。たとえようのないまばゆさを放射する、最高密度の作品集だ。もともとこの作家を知ったのは、「漫画に関するWebページ「OHP」」の芝田隆広氏の実兄でもある本田…

伊藤重夫『チョコレートスフィンクス考』(跋折羅社)

2010年代に36年ぶりに新刊が出た伊藤重夫の一冊目の単行本。『踊るミシン』が86年に発行されたおよそ230ページの長編であるのに対し、こちらは70年代に描かれた作品を多く含む300ページ超えの重量級中短編集である。またすべての作品は、『踊るミシン』より…

スワヴォミール・ムロージェク「漫画」(未訳)

ムロージェクは以前読んだ『鰐の涙』(未知谷)という作品集が印象に残っている。本の結構そのものは短編小説集なんだけど、ときおり挿入される著者自筆の漫画がいい味を出していて、クスクス笑いっぱなしの読書体験にさらにひと振りのチャーミングなスパイス…

内田善美「かすみ草にゆれる汽車」(集英社)

内田さんの著作(『ソムニウム夜間飛行記』などの画集含む)で一冊だけ読み残していたもの。 この短編集に収められている作品はどれも、アメリカ中西部イリノイ州にある「風の町」ゲイルズバーグを舞台としている。そのため、作者が表紙絵を手がけているハヤカ…

こがわみさき『ココログイン』(KADOKAWA)

新作が読めるだけで幸せ!なこがわみさきのひさびさの学園オムニバス。〈魅惑〉という感情を表現させたら右にも左にも出る者はいない天才マンガ家。という確信が本書を読んでさらにほどけなくなりました。宙空に舞う胸の高鳴りのクレシェンドは、もう少しし…

関口涼子+パトリック・オノレ「『坂道のアポロン/Kids on the slope』マンガ共同翻訳のプロセス、可能性とその意義」(石毛弓、柏木隆雄、小林宣之編『日仏マンガの交流 ヒストリー・アダプテーション・クリエーション』思文閣出版、2015)

小玉ユキ『坂道のアポロン』のフランス語への翻訳者で詩人としても知られる関口涼子と、その共訳者であるパトリック・オノレによる、マンガの共同翻訳についての論考。マンガの「共訳」を扱った文章というのは現時点では非常にめずらしく、日本のマンガの普…

台北の「濃ゆい」マンガ喫茶「MangaSick」レポート

漫画喫茶+書店の役割を兼ねている台北のお店、MangaSick。うわさには聞いていたけどめちゃくちゃ濃いお店です。 日本の観光ガイドやネットなどでは「サブカル漫画」や「タコシェ的な漫画」を多く取り扱っているなどと紹介されていたりする(例:松田義人『…

衿沢世衣子『ベランダは難攻不落のラ・フランス』(イースト・プレス)

『シンプルノットローファー』!(単巻バージョンのほうが好き)『ちづかマップ』!読んでいてなぜかいつも心地よい気分にさせられてしまう衿沢さんの最新短編集。初めはタイトルを見て「どんな内容?」とか思ったのですが、それぞれの作品のタイトルをパッチ…

あらゐけいいち『city』(1)(講談社)

見たことのないリアリティのカタチ。新しい新しい楽しい新しい!CITY(1) (モーニング KC)posted with amazlet at 18.07.15あらゐ けいいち 講談社 (2017-03-23)売り上げランキング: 61,685Amazon.co.jpで詳細を見る

佐々木マキ『うみべのまち』(太田出版)

読んだー。出たすぐ直後、ジュンク堂の難波店で著者サイン入りを買っていたもの。マンガ家としての佐々木マキ作品の軌跡を集成した、革命の熱い一冊であり、こういう企画を実現させてくれた太田出版に拍手を送りたい(オビ文・村上春樹)。収録作品の多くはす…

コトヤマ『だがしかし』(1)(小学館)

面白いです。……だがしかし(However)。だがしかし(1) (少年サンデーコミックス)posted with amazlet at 17.09.13小学館 (2014-12-08)売り上げランキング: 4,226Amazon.co.jpで詳細を見る

黒田硫黄『茄子』(1)(講談社)

再読。数多ある、自分の人生を変えた本のうちの一冊(宮崎駿がオビに推薦のことばを寄せていたことも記憶に新しい)。「アンダルシアの夏」。「ランチボックス」。十数年ぶりに読み返してみても、鳥肌が立つ。茄子(1) (アフタヌーンコミックス)posted wit…

久住昌之+水沢悦子『花のズボラ飯』(2)(秋田書店)

口 福 無 限 。花のズボラ飯(2)posted with amazlet at 14.10.12久住昌之 水沢悦子 秋田書店 Amazon.co.jpで詳細を見る

安達哲『バカ姉弟』(5)(講談社)

なんともいとおしい子供の情景。こんなマンガはずーっと永く続いていてほしい。バカ姉弟(5) (KCデラックス)posted with amazlet at 14.04.17講談社 (2012-10-17)Amazon.co.jpで詳細を見る

ばらスィー『苺ましまろ』(7)(メディアワークス)

4年ぶりの新刊。超おもしろかった。最新巻であるこの巻のオビにも、「かわいいは正義」という宣言が高らかにうたわれている。その通り、このマンガのなかでは、キャラクターはかわいければ何をやっても許されてしまうのである。子どもたちがどんなハチャメチ…

武富智『この恋は実らない』(1)〜(3)(集英社、全3巻)

最高におもしろかった。真の傑作は、タイトルの予言(この恋は実らない)なんてやすやすと跳びこえてゆきます。お幸せに!

高野文子『おともだち』(筑摩書房)

高野さんのマンガで、一冊だけ読み残していたもの。「春ノ波止場デウマレタ鳥ハ」が傑作。『黄色い本』や『棒がいっぽん』におさめられている作品にのなかには、読書を選ぶというか、試しにかかるような感触のものもあったように思う。この本の収録作には、…

こがわみさき『しあわせインベーダー』(エニックス)

ういういしいなあ、もう! 思春期とかべつに戻れなくても、こがわさんの作品を読めばあのときのうれしはずかしいろいろな感じよみがえってくるから全然充分ッス!っていうこのスタンス。いちいちキュンとしてしまう良作でした。しあわせインベーダー (ステン…

二ノ宮知子『平成よっぱらい研究所』(祥伝社)

『のだめカンタービレ』ははじめの巻でやめちゃっていたけれど、これは超絶おもしろかった。ナンセンス&アヴァンギャルドなエッセイもの。飲んべえの所長(作者)が、愉快な研究員たち(もりへーがいいキャラ……)とともに狼藉とハレンチのかぎりを尽くす。ここ…

谷口ジロー+久住昌之「孤独のグルメ」の新作(先々週号くらいのSPA!)

いや、おどろいた。これは新展開ではないかしら。すくなくとも、こういう話はこれまでになかった。五郎がなぜか砂丘を登っているという、意表外かつ謎めいた光景。ここから作品ははじまる。こんなマンガだったっけ?食事の場面は、いつもながらに美味しそう…

岩岡ヒサエ『オトノハコ』(講談社)

田辺きみは、新高校一年生。ある朝彼女は、すこしばかり、学校に早く着きすぎてしまった。下駄箱にたたずむ彼女の耳に、ふいにきれいに重なりあった歌声がながれこむ。ああ、合唱部の練習なんだな……ちょっとだけなら興味がある。でもわたしは、じぶんの声に…

中村明日美子『鶏肉倶楽部』(太田出版)

短編集。おもしろかった。華麗でスノビッシュな、倒錯行為のショウケース。どのはなしもさらりと読めてしまうけれど、工夫や趣向がこまやかにこらされている感じがした。楽しそうに描いているなー、というのが伝わってくるのがいいとおもう。『Jの総て』『…

木尾士目『げんしけん』(10)(講談社)

あの『げんしけん』の続きが出た。 当時の主力メンバーは、今やほとんどみんな社会人。 斑目は疲れ気味のサラリーマン。もう卒業してしまった大学のベンチで、 缶ビールをいかにも旨そうに飲んでいる。 久我山のお腹は、リアル中年らしくかわいげにふくよか…