2022-01-01から1年間の記事一覧

アンダーカレント

中村融さんのinformativeなブログ、SFスキャナー・ダークリーを見返していてうなってしまった記事。 sfscannerdarkly.blog.fc2.com 共編者の山岸真氏にも秘密にしていたが、河出文庫の『20世紀SF』の裏テーマとして「逃避としての幻想の意味を幻想小説の形…

社会幻語学の三歩手前で

中国語圏における日本のSF小説やアニメ・マンガ紹介における文脈で、「脳洞」という言葉はずいぶん目にする機会が多い気がする。完全にはニュアンスを理解しきれていないのだけど、「脳内補完を行う場所」、ひいては「脳内にすさまじいイマジネーションが横…

2017年にハーバード大学で開講されていたGirl Culture, Media, and Japanという授業のシラバスが公開されていて、コース説明だけでも無茶苦茶におもしろい(→Link)。 まずコース通しての教科書はOptionalを除くと岡崎京子『Pink』、吉本ばなな、萩尾望都、吉…

海をあつめる

とあるスカイプ中国語会話の先生(日本在住、日本語学校で学んでいる)のプロフィールを見ていたら、こんな部分が目に留まった。「日本の好きなところ」という欄があるのだけど、こんな風に記されている。 「日本の好きなところ:海が見えるところ」 特にど…

「秋刀魚」32号(2021年)(特集:「台日彼女AB面宣言」)

我第一次看到這本的雜誌是通過「本の未来を探す旅 台北」,現在我正滿懷期待著下一期的雜誌。 我只去過台灣兩次度假,但我認為2021年第32期的“台日彼女AB面宣言”是一個前所未有的精彩專題。通過戰後日本戲劇中對女性的表現來追溯女性在社會中地位的變化,這…

テクノロジーが人間の意識に与えるインパクトについて、何かを撃ち抜くかのように言い当てているように思える作品。『ヘルタースケルター』はインターネット以前に描かれた作品なのに、インターネット以後の女性消費のある側面について既に批評しているよう…

Instagramの「Chika Sagawa」タグで見つけてときめいてしまった、左川ちか詩選集のスペイン語版の装丁(→Link)。「昆虫」を意識したと思しき、ちいさな生き物たちがあしらわれていて愉しい。 www.librosdelamanecer.cl

普通、「私は〇〇は嫌い」という言い方からはさほどの生産性は期待できないことが多い。けれど、場合によってはそれが作家にとってのほとんど明快なマニフェストとして作用することがある。たとえば三島由紀夫はブラッドベリを「ひよわな感性を売り物にした…

折にふれて聞く「オーストラリアでは選挙で投票をしないと違法になる」という文化の違いについてちょっと知りたくなって、竹田いさみ・森健・永野隆行編『オーストラリア入門』(東京大学出版会、第2版刊は2007)。「投票手続きを理由なしでおこたれば20ドルの…

マンディアルグの翻訳というと生田耕作や澁澤龍彦のイメージが一般的には強いが、1950年代の前半から大濱甫 (シュオッブの翻訳家で礒崎純一氏の先生としても知られる)がすでに「三田文学」「文藝」などの雑誌に訳している。1953年の「三田文学」に訳された「…

日韓の名字の比較

「ことばと文化の日韓比較」という副題の付された任栄哲、井出里咲子 『箸とチョッカラク』(大修館書店)。この中で日韓の名字を比較するコラムがあって、「金」「李」「朴」が韓国の名字では多数を占めるというのは本を読む前から知っていたけど、韓国の名字…

最近「え、この作品、英訳あるの?」と驚いたのが尾崎翠の「第七官界彷徨」。 「MONKEY」(英語版のほう)vol.1の巻末には、「Why hasn't this been translated?」という名の、未訳の日本文学について数人の翻訳家が紹介するコーナーがある。ここで尾崎翠「第…

Russel Hoban『The Lion of Boaz-Jachin and Jachin-Boaz』(Valancourt)

One of the best novels that I have ever read. I used to have little interest in things like love, growth, or any other central feelings of human. Also, I had thought that explained why I am fond of writers like J.G.Ballard. This book, howe…

当ブログの目次を作成してみました(→Link)。ブログ開設以来の書評、作家・マンガ家への言及を(ほぼ)すべて五十音順にしてリストしています。

日本の幻想文学研究の俊英、ピーター・バナードが今学期とある日本の大学で開講しているGhosts and Goblins in Modern Japanese Literatureという授業(使用言語は英語で受講生は留学生が多い)。週替わりで短編ないし長編の一部などを読んでいくが、テキスト…

コンビニで小梅ちゃんを見ると、それだけで一日ハッピーな気分になる。僕にとって林静一とはイラストレーターである以前に『赤色エレジー』を描いた「ガロ」の漫画家。そんな人の絵を令和の今も日常的に見ることができるというのは、まちがいなくささやかな…

気鋭の日本文学翻訳家・Polly Bartonの初エッセイ集Fifty Sounds(Fitzcarraldo Editions,2021)より"zara-zara"。 この本の読者の中にはヴィトゲンシュタインと聞いて裸足で逃げ出す方もいるかもしれないけれど(!)、私はこの章が大大大好き。私にとって『…

お客さんがリクエストしたキャラクターを「3Dラテアート」でなんでも再現してくれる原宿のカフェ、REISSUE。Shaun TanのArrivalに出てくる不思議な生き物を描いてもらったよ~!

日本のとある大学でピーター・バナードの授業を受けているインドネシアの友人と少し話す。courseでは泉鏡花や幸田露伴や村山槐多といった面々が登場すると聞いてニヤリ。それぞれの作家の作品がassignmentになっているかまでは聞きそびれてしまったけど、源…

とある書店に入ったら、入り口にアニー・ディラード『本を書く(原題:The Writing Life)』が平積みにされていて目を瞠った。 文庫に近いサイズになったそのうちの一冊に、瞬間に汗ばんだ手を伸ばし奥付を見てみると、つい今年になってから復刊されたばかり。…

円城塔に「傑作しか書けないのが弱点」とまで書かれてしまったテッド・チャンの新作がいよいよ「SFマガジン」誌上に到来する。迫ってきている。 原書で読み終えた識者たちがこぞって絶賛しているところをみると、その弱点は今回もまたカバーできなかったの…

個人的メモ。名状しがたい、ある種の「痛む」感覚にみちたSFの秀作群。 ジェフ・ライマン「オムニセクシュアル」ブルース・スターリング『蝉の女王』カリン・ティドベック「ジャガンナート――世界の主」伊藤計劃『ハーモニー』村田沙耶香「殺人出産」市川春子…

フィリピンの先生とスカイプ英会話。セブ○イレブンの揚げ物コーナーの写真を見せて、「からあげ棒」の説明(あなたの国にもセブンイレブンがあるのは知っているが、本国のとはゼンゼンちがうんだ、と前置きをしてから)。 「からあげ」は日本語で「fry」とい…

むかし、ある日本語の文章を読んでいたら「ふたりぼっち」という言葉に出くわして、不思議な語感だなと感じたことがある。ひとりぼっちならわかるけど、「ふたりぼっち」って。 きょうカナダの詩人、アン・カーソンの『赤の自伝』の一節を読んでいたらふたり…

内田善美『星の時計のLiddell』、英訳されるかもとのウワサ(→Link)。続報を待て!