2023-01-01から1年間の記事一覧

稲垣足穂が現代のマンガ家たちにもたらしたもの(思案中)

白山宣之…『10月のプラネタリウム』では足穂作品に想を得た作品が収録、呉智英も『マンガ狂につける薬』シリーズで指摘伊藤重夫…神戸という舞台、コマ間の飛躍。『ダイヤモンド・因数猫分解』では作家、稲垣足穂そのひとが登場する作品も鈴木翁二…「白昼見」…

小説のストラテジー

ル=グィンの小さな創作指南書、Steering The Craft。この書物で前提となっている考え方というのは、大海に漂う魔法のボートを乗組員が操舵するように、作家は自分の技術をきびしくコントロールすべきであるということだ。ただでさえ船体は波で揺動してやま…

特別公開?!海外の知人に日本文学を読んでもらえないか、と頼むときのメールの一例。こういうメールを送る活動は10年以上前からおこなっているんですが、今回リライトしてこころみに「150-300 words in a text file」という条件を加えています。読んでくれ…

わたしがシドニーで泊まったのは、キングス・クロスという地城の歓楽街のすぐそばにあるホテルだった。あまり古本屋めぐりをする時間がなくて、一軒だけ行ったのがそのホテルの近所にある店。なにしろ怪しげな歓楽街のそばだけに、想像してはいたが、やはり…

The book as furniture. Shelved rows of books warm and brighten the starkest room, and scattered single volumes reveal mental processes in progress, books in the act of consumption, abandoned but readily resumable, tomorrow or next year. By…

A Note on Translators' Notes

(日本文学の翻訳に関わる方向けに別の場所で書いた記事ですが、こちらにも転載します)From the standpoint of its history, translation is umbilical to the Japanese language. In other words, one cannot emphasize enough on how much tremendous effec…

「多様性」という漢字三文字をジッと見つめても、それはあまりに端的で素っ気なく、多様性の「た」の字もないように感じられる。それは英語のdiversityだって同じ。南アフリカの人と初対面で話すと、「My country is a rainbow nation!」とよくニコニコしな…

あくまできょうの気分で、自分のお気に入り映画を少しばかり並べてみる。何作か、映画ではなく短篇の映像作品といったほうが正しいものも入っております。2001年宇宙の旅(アメリカ) ミツバチのささやき(スペイン) はちどり(韓国) 牯嶺街少年殺人事件(台湾) …

CSFDB(中文科幻数据库)中国の作家の方から教えてもらった中国のSFデータベース(リンクはトップページではありません)。たとえばロバート・シルヴァーバーグの項をのぞくと、『夜の翼』が第三回星雲賞海外長編部門受賞、などといった日本での賞の受賞歴まで書…

2023 New and Upcoming Japanese Fiction Releases Here’s a great webpage where you can find Japanese literary fiction works that will be published in English-speaking countries. This makes me rejoice because it includes not only the latest w…

Amazon.frで、日本の作家性の強いマンガから『ドグラ・マグラ』『高丘親王航海記』までをフランス語に訳すパトリック・オノレの名で検索してみると、本当に幅広い作品を訳していて驚く。ユズキカズなんて訳しているのにはびっくりするほかない。 また、よし…

The Translation DatabasePublishers Weeklyが提供している、国を(国も)指定して検索できる翻訳データベース。完全に網羅的ではないかもしれませんが、アメリカで刊行された日本のリテラリーフィクションを年ごとにチェックできます(ただし2008年以降限定)。…

ジョン・アップダイク『アップダイクと私』(河出書房新社)。ちょうど先日、母校の大学図書館で同著者のDue Considerationsを見つけて少しコピーを取ってきたものの、批評・エッセイ集の全体像がまったくつかめずにいた。この本の巻末にある若島正の解説はま…

ここ7,8年くらいで話したポーランドの若者(あくまで個人的な推定では20代以下)のうち、詩人・シンボルスカの話題を振ってみて知らなかったひとはひとりもいない(といっても15人には満たないくらいの人数だけど)。ある時、「日本ではニンギョの翻訳が最近出た…

永田耕衣『しゃがむとまがり』(コーベブックス)

疑うべくもなく最高傑作。人類語で書かれていながら、半歩すでに人類語を踏みこえてしまっているようなところがある。俳人である著者の光源になっている西脇順三郎の代表作『旅人かへらず』中、二篇の詩に現れている「しゃがむ」および「まがり」のモチーフ…

MoMA Design Storeのグッズで、名画をゆるキャラ風(!?)にデフォルメしたコースター(左上はモネ)。荒巻義雄センセイがSNSをやっているかは存じ上げないが、ジェフ・アンダミア編のアンソロジーにも収録された傑作「柔かい時計」にかけてダリのコレをプロフ…

内沼晋太郎、綾女欣伸 『本の未来を探す旅 台北』(朝日出版、2018)。韓国編とあわせて、出版業界の人間に限らす、本をめぐる文化の違いや海外のブックデザインetc.に関心のある向きには強くオススメしたい。洗練された選書で知られる大型新刊書店・誠品書店…

ジェフ・アンダミア編のアンソロジーより、Musharraf Ali Farooqi “The Jinn Darazgosh”。恥ずかしながら、(幻想小説に限らず)パキスタンの小説というものそのものを読むのが生まれて初めて。秀作とは感じなかったけど、ざくろの木が作品のなかで大きな役割…

白山宣之『10月のプラネタリウム』(双葉社)

たった今ラストのページを読みおえ、頬を火照らせ、呼吸を整えながらこの文章をタイプしている。たとえようのないまばゆさを放射する、最高密度の作品集だ。もともとこの作家を知ったのは、「漫画に関するWebページ「OHP」」の芝田隆広氏の実兄でもある本田…

現代中国文学小屋残雪翻訳および紹介のパイオニアである近藤直子氏が、生前に運営していたサイトだけど、いまも多くの記事をWayback Machineで見ることができる。残雪の小説以外の文章には初めて触れたが、これは、「小説家による批評」などという言葉で要約…

「イギリス料理はまずい」という言葉は、多くの人が聞いたことがあるにちがいない。そこで考え始めるのは、「もし自分がイギリスに生まれていたら、どういう世界像や経験を持っていたか」ということ。外国の人と話すたびに、いつも「イギリス料理ってマズい…

イギリスから海を越えて、金井美恵子『軽いめまい』の英訳であるMild Vertigoをご恵贈いただきました。実験精神とたくらみにみちた金井文学が、世界にさらに広く普及していきますように。

Masayo Nonaka Remedios Varo: The Mexican Years(Rm Verlag)

2000年代に、こんなことを思ったことがあった。「幻想美術*の画集でクノップフやレメディオス・バロはいい画集が国内の出版社から出ていないなあ」。その頃と較べるといまはインターネットで洋書を買うのもはるかに簡単になった。Amazonでは著者名がMasayo N…

Dean Francis Alfar “The Kite of Stars”。高貴な家庭に生まれ落ちた少女、マリア・イサベラが星の高さにも達する凧を造り上げるため、肉屋の少年と世界中を旅する物語。寓話あるいは創作民話のような雰囲気が色濃い。フィリピン、そしてスペインの文化や言…

斎藤兆史と野崎歓の対談集、『英語のたくらみ、フランス語のたわむれ』(東京大学出版会)より。 斎藤 日本人の言語に対する節操のなさはいい意味も悪い意味もあるんだろうけど、こんなに表記体系が複雑で混乱してる言語は、世界にそんなにないんじゃないかと…

過去への線、未来への線――オールタイム・ベスト短章

SF小説というジャンルに限っても、これまでさまざまな媒体でオールタイム・ベスト(以下、適宜ATBと略すことがある)のアンケートが行われてきた。この文章では、・〈SFマガジン〉2014年7月号(700号)・〈SFマガジン〉2006年4月号(600号)・〈SFマガジン〉1998年…

2021年に早稲田大学で行われたシンポジウム、「詩の翻訳、詩になる翻訳 Translating Poetry, Translation as Poetry」のイベント記録(リンク先の「こちら」を参照)。パネリスト (Panelist): 四元康祐 (Yasuhiro Yotsumoto) 、藤井一乃 (Kazuno Fujii)、柴田…

フィリピン・書店レポート 

※2017年12月にまとめた記事です、文章も写真も当時のもの。旅の楽しみのひとつは本屋さんへ行くこと。今回は、セブっ子たちの流行の発信地でもある超巨大ショッピングモール、アヤラモールの中にあるNational Book Storeの棚を紹介する。 (アヤラモールの中…

「文藝」2020年冬号における日本文学翻訳家・編集者大アンケート、「世界に拡がる日本文学の行方」の竹森ジニーさんの回答より。 Q.あなたが日本文学に期待することは何ですか? A.物語や登場人物、また時には革新的な書き方を通して、これまでとは異なる世…

おしらせ

「カモガワGブックスVol.4 準備号 《池澤夏樹=個人編集 世界文学全集全レビュー(第Ⅰ期)》」に論考、「“新進作家”、レジェンド・エリスンに嚙みつく? ――ハルキムラカミによる若干のSF批評に就いて」を寄稿しました。村上春樹とSFとの関係は邵丹『翻訳を…